第 1 章 読了 18 分

基礎編

ネットワークは、コンピューターと回線をつなげた郵便のような仕組みです。
この章では、住所(IP アドレス)道(ルーティング)順番(TCP/UDP) を順に説明します。最初に読む章です。

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この章で学ぶこと

ネットワークは、世界中のコンピューターを巨大な郵便システムに見立てた仕組みです。手紙(データ)を、住所(IP アドレス)に向けて配達する。基本はそれだけです。

ただし扱う量がとても多いので、住所の付け方配達ルートの決め方同時に大量に届いたときの捌き方途中で盗み見しない仕組み ── すべてに細かいルールがあります。そのルールを プロトコル と呼びます。


/ 01 · OSI MODEL

7 層モデル ── 仕事を切り分けるモノサシ

実機がそのままこの形をしているわけではない。けれど「これは何層の話か」がわかると、霧が晴れる。

ネットワークの仕事を、上から順に 7 段階 に切り分けた考え方。1980 年代に ISO が「世界中の機器がバラバラに作られても通信できるように」と定めた、いわば 理想形

名前役割代表例
7アプリケーション層アプリの会話HTTP SMTP DNS
6プレゼンテーション層暗号化・文字コード変換TLS JPEG ASCII
5セッション層会話の開始・終了管理SSH RPC
4トランスポート層確実に・順序通りに届けるTCP UDP QUIC
3ネットワーク層住所(IP)で経路を決めるIP ICMP IPsec
2データリンク層隣の機器との 1 区間配送Ethernet Wi-Fi MAC
1物理層電気信号・光・電波ケーブル / 光ファイバ / 電波
郵便のたとえで読みかえる
7 層 = 手紙の中身(こんにちは、元気ですか)。4 層 = 「ちゃんと届けて返事ももらう」配達保証(書留郵便)。3 層 = 住所の書き方(〒で住所探索)。2 層 = 隣町の郵便局との運搬(バイク便)。1 層 = 道路(アスファルト)。
7アプリケーションHTTP / DNS / SMTP — 「中身」 6プレゼンテーションTLS / 文字コード / 圧縮 5セッション会話の開始 / 終了 4トランスポートTCP / UDP — 「配達保証」 3ネットワークIP — 「住所」 2データリンクEthernet / Wi-Fi — 「隣まで」 1物理ケーブル / 電波 — 「道路」 L7 L4 L1 送る側
送信側はアプリ層から物理層へ降りていき、受信側は物理層から登る。7 層は「役割の塔」

/ 02 · TCP/IP MODEL

実機は 4 層 で動く

OSI は理想、TCP/IP は現実。実際のインターネットはこの 4 層で組み立てられている。

名前OSI 対応代表プロトコル
4アプリケーション5〜7 層HTTP HTTPS DNS SMTP SSH
3トランスポート4 層TCP UDP QUIC
2インターネット3 層IP ICMP
1ネットワークインタフェース1〜2 層Ethernet Wi-Fi

試験対策では OSI 7 層、現場では TCP/IP 4 層。両方とも頭に入れておくと、本を読むときも障害対応のときも迷子にならない。


/ 03 · IP ADDRESS

IP アドレス ── インターネットの 住所

インターネット上のあらゆる機器には IP アドレス という住所が割り当てられている。IPv4 なら 4 つの数字(例:192.168.1.1)、IPv6 なら 8 つの 16 進数(例:2001:db8::1)。

IPv4 / 1981–

32 ビット / 約 43 億個

2011 年に在庫が枯渇。今は IPv6 と NAT という変換装置で延命中。192.168.x.x10.x.x.x は家・社内用のプライベート枠。

IPv6 / 1998–

128 ビット / 約 340 澗個

地球上の砂粒一粒ずつに割り当てても余る数。本来はこちらに移行する予定だったが、IPv4 の延命が予想以上にうまくいって 30 年経ってもまだ混在中。

プライベート IP と グローバル IP
家の中の住所(プライベート IP:192.168.x.x など)と、外向けの住所(グローバル IP)に分かれる。家のルーターが NAT(Network Address Translation) で変換して、家中の全機器がたった 1 つのグローバル IP で外と通信できる仕組み。だから世界の IPv4 はまだ枯渇しきっていない。

/ 04 · SUBNET

サブネット ── 住所を「町」「丁目」に分ける

192.168.1.0/24 という表記の /24サブネットマスク。32 ビット中、上位 24 ビットが (ネットワーク部)、残り 8 ビットが 丁目・番地(ホスト部)を表す。

192.168.1.0/24 の世界 ネットワーク部(24 bit) 192 . 168 . 1 . ホスト部(8 bit) 1 〜 254 ↑ ここまでが「町」(同じサブネット) ↑ 一軒一軒の「家」 町内なら直接話せる。外の町に行くには ルーター(門番)が必要。
/24 = 256 個のホスト枠(実用は 254 個)。ネットワーク部とホスト部の比率がサブネットの大きさを決める。

/24 = 256 個(実用 254)入る小さな町。
/16 = 65,536 個入る大きな町。
/30 = 4 個(実用 2 個)の超ミニ町(ルーター間直結用)。


/ 05 · ROUTING

ルーティング ── 道を選ぶ 仕事

パケットが目的地に届くまで、複数のルーター(道の分岐点)を経由する。各ルーターは ルーティングテーブル(「この宛先ならこっち」表)を持っていて、毎パケットごとに次に渡す相手を決める。

IGP / 組織内

OSPF / IS-IS / EIGRP

企業内・キャンパス内の最適経路を計算するためのプロトコル。リンク状態を全員で共有し、ダイクストラ法で最短経路を算出する。

EGP / 組織間

BGP

インターネット全体の経路を決める王様。AS(自律システム)番号を持つネットワーク同士が経路情報を交換し合って、世界中の道を共有する。

BGP が止まった日
2021 年 10 月 4 日。Facebook(現 Meta)は BGP の設定変更ミスで自社の全グローバル経路を「無い」と全世界に通知してしまい、Facebook / Instagram / WhatsApp が 6 時間ダウン。地球上の 35 億人がアクセス不能になった。BGP は世界中のインターネットを支える神経網。誰かが「もうそっちに道はないよ」と宣言すれば、本当に道は消える。

/ 06 · TCP vs UDP

TCP と UDP ── 確実か、速いか

TCPUDP
性格真面目で確実軽快で気楽
順序保証ありなし
再送あり(届かなければ何度でも)なし(届かなければ捨てる)
速さハンドシェイクあり(やや遅)即送れる(速い)
用途HTTP / メール / SSH / ファイル転送DNS / 動画ストリーミング / オンラインゲーム / VoIP
なぜゲームは UDP なのか
FPS や格闘ゲームでは、0.5 秒前の正確な情報より、今の不完全な情報の方が価値がある。再送して 0.5 秒遅れるくらいなら、無くなったパケットは諦めて、新しいパケットで上書きするほうが体験が良い。動画ストリーミングも同じ理屈で「巻き戻して再送」より「次のフレームへ進む」を選ぶ。

/ 07 · PORT

ポート番号 ── 部屋番号

IP アドレスが「ビルの住所」なら、ポート番号は「部屋番号」。1 台の機器でも、Web サーバ・メール・SSH を別ポートで同時に動かせる。

ポートサービス性格
22SSH暗号化されたリモートシェル
25SMTPメール送信(サーバ間)
53DNS名前 → IP の問い合わせ
80HTTPWeb(平文)
443HTTPSWeb(TLS 暗号化)
3306MySQLRDB
5432PostgreSQLRDB
6379RedisKVS
27017MongoDBドキュメント DB

0〜1023well-known port(標準予約、root 権限が必要)、1024〜49151 はアプリ用、49152〜65535 は一時利用(クライアント側のランダム発番)。


/ EPILOGUE

この章で覚えた 5 行

RULE 01

ネットワーク = 箱 + 道

郵便システムの言い換え。手紙の中身がデータ、住所が IP、道がケーブル。

RULE 02

OSI 7 / TCP-IP 4

OSI は理想のモノサシ、TCP/IP は実機。どっちも「何層の話か」を整理する道具。

RULE 03

住所 → 町 → 部屋

IP は住所、サブネットは町割り、ポートは部屋番号。3 つで一意に届く。

RULE 04

道はルーターが選ぶ

組織内は OSPF、世界は BGP。BGP が止まれば、本当に世界が止まる。

RULE 05

TCP は真面目、UDP は気楽

用途で使い分ける。Web は TCP、ゲームと音声は UDP。