第 4 章 読了 20 分

クラウド

AWS VPC、Cloudflare、CDN、Edge Computing。
物理ケーブルを引かずに論理だけで作る、クラウド時代のネットワーク を説明します。AWS と Cloudflare の違いも整理します。

/ 01 · VPC

VPC ── クラウド上の 自分専用 ネットワーク

VPC(Virtual Private Cloud)は AWS / GCP / Azure に作る仮想ネットワーク。物理的にケーブルを引かなくても、自分専用の閉じたネットワーク空間を持てる。クラウド時代の「論理的なデータセンター」。

VPC の中はサブネットに分割でき、パブリックサブネット(インターネットに直接接続)と プライベートサブネット(DB 等の隠したいサーバ)を組み合わせるのが定番。

VPC ─ 10.0.0.0/16 PUBLIC SUBNET 10.0.1.0/24 Web Server / LB 公開する顔 PRIVATE SUBNET 10.0.2.0/24 App / DB 外から見えない Internet NAT
公開する顔(Web / LB)と隠す部屋(App / DB)を分けるのが、クラウド設計の基本形。
セキュリティグループ vs ネットワーク ACL
セキュリティグループ(SG)サーバ単位 のファイアウォール(ステートフル:戻りの通信は自動許可)。
NACLサブネット単位 のファイアウォール(ステートレス:戻りも明示する必要あり)。
AWS では通常 SG だけで足りる。NACL は「絶対にこの IP は拒否」の番人として補助的に使う。

/ 02 · LOAD BALANCER

ロードバランサー ── 交通整理

1 台のサーバでは捌けない大量のアクセスを、複数のサーバに振り分ける。後ろに 100 台並べても、ユーザーには 1 つの入口に見える。

種類動作層使い分け
L4(トランスポート)TCP / UDP速い・シンプル。ポート単位で振り分け
L7(アプリケーション)HTTP / HTTPSURL・ヘッダ・Cookie で振り分け可

AWS: ALB(L7)/ NLB(L4)。Cloudflare: 全部 Cloudflare 製で透過的(裏で勝手にやる)。

振り分けアルゴリズム
Round Robin(順番に均等に) / Least Connections(接続数が少ないサーバへ) / IP Hash(同じ IP は同じサーバへ=セッション維持)。ステートフルなアプリは IP Hash か sticky session 必須。

/ 03 · CDN

CDN ── 世界中に キャッシュ を配る

CDN(Content Delivery Network)は、画像・CSS・JS 等の静的ファイルを世界中の エッジサーバ にキャッシュして、ユーザーに最も近い場所から配信する仕組み。

日本のユーザーが東京のサーバから 1 ファイル取るのが 30 ms、米国西海岸から取ると 150 ms
CDN を挟むと、東京 PoP(拠点)から 5 ms で取れる。 — Latency Reality
GLOBAL

Cloudflare / Fastly / Akamai

世界 200+ 拠点。Cloudflare は無料プランあり。Akamai は古参の王者。

CLOUD-NATIVE

AWS CloudFront / GCP Cloud CDN

同クラウドの S3 / Cloud Storage と相性最高。設定が手数少なく済む。

SPECIALIZED

bunny.net / KeyCDN

低価格・帯域従量。動画配信に強い。インディー個人開発に人気。

キャッシュ制御の鍵
Cache-Control: public, max-age=31536000, immutable(1 年キャッシュ・変更しない)が静的アセットの定番。HTML は no-cache。画像・JS・CSS にハッシュ付きファイル名(例:main.a3f7c.js)を付ければ、更新も衝突なく行える。

/ 04 · EDGE COMPUTING

Edge Computing ── 計算を エッジ

CDN は静的ファイルを配るだけ。Edge Computing は、エッジで 動的な計算 も実行する。

例:A/B テストの分岐、認証チェック、地理によるリダイレクト、リクエスト書き換え、HTML の一部書き換え、画像のリサイズ。

サービス言語特徴
Cloudflare WorkersJavaScript / Wasm無料 10 万 req/日。V8 Isolate で起動 0 ms
Vercel Edge FunctionsJavaScriptNext.js と統合・スマート CDN 連携
AWS Lambda@EdgeNode.js / PythonCloudFront 統合・カスタマイズ自由度高い
Fastly Compute@EdgeRust / Wasm強力。高速。Wasm でなんでも動く

/ 05 · CLOUDFLARE

Cloudflare ── DNS から 全部

Cloudflare は元々 CDN 会社だったが、今やネットワーク・セキュリティ・コンピュート全方位のプラットフォームに進化。ドメインを Cloudflare に向けるだけで、CDN・WAF・DDoS 防御・SSL ── 全部ついてくる。

NETWORK

DNS / CDN / WAF / DDoS

ドメインを向けるだけで、世界 300+ 拠点のエッジに乗る。

SECURITY

Access / Tunnel / Zero Trust

VPN なしで社内アプリへ。ゼロトラストの実装プラットフォーム。

COMPUTE

Workers / Pages / R2 / D1

エッジで JS 実行、静的サイトホスティング、S3 互換ストレージ、SQLite DB。

PERFORMANCE

Argo / Images / Stream

スマートルーティング、画像変換、動画配信。

なぜ無料?
Cloudflare の無料プラン(CDN / DNS / SSL / DDoS 防御)は、企業向け有料サービスの 呼び水。世界中のサイトを Cloudflare 経由にすることで、攻撃パターン・トラフィック分析・脅威インテリジェンスを蓄積し、それが有料製品の差別化要素になる。「無料で囲って、データを集める」モデル。

/ 06 · AWS vs CLOUDFLARE

AWS と Cloudflare ── 世界観 の違い

AWSCloudflare
思想仮想 DC を貸し出す(IaaS)世界のネットワークを薄く重ねる(Edge)
セットアップVPC / Subnet / NACL / SG 設計が必要DNS を向けるだけで終わる
料金Egress(外向き通信)が高いEgress 無料
得意あらゆる規模のシステム構築静的サイト・Edge 計算・セキュリティ
苦手軽量サイトには重い大規模 DB・複雑な VPC 構成
実務では「Cloudflare をフロントに、AWS をバックエンドに」の組合せが定番化しつつある。
Cloudflare で DDoS / CDN / WAF を、AWS で RDS / S3 / Lambda を。 — Modern Architecture, 2026