生涯
1950年、長野県中野市生まれ。本名は 藤澤守(ふじさわ まもる)。「久石譲」はクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)の名前を漢字に当てたペンネーム(クインシー・ジョーンズ → 久石譲)。少年時代から音楽に親しみ、4歳でヴァイオリンを始めた。
国立音楽大学作曲科卒業。70年代はミニマル・ミュージック(スティーブ・ライヒ、フィリップ・グラス)の影響を受けた現代音楽家として活動していた。1981年にアルバム「Information」でデビュー。
1984年、宮崎駿監督の映画「風の谷のナウシカ」の音楽を手がけたことが転機。以降、ジブリ作品の音楽をほぼすべて担当(「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」「崖の上のポニョ」など)。北野武監督の「HANA-BI」「菊次郎の夏」、山田洋次監督作品の音楽でも国際的に知られる。
2024年現在、74歳。指揮者としても活発に活動し、ニューヨーク・フィル、ロンドン交響楽団など世界中のオーケストラを指揮している。70代になってからの活動量がむしろ増している。
人となり
久石譲は 「クラシック教養と大衆音楽の橋渡し」 を意識する稀有な作曲家。インタビューでは控えめで誠実な人柄が伝わる。映画音楽家としては第一人者だが、自身を「現代音楽家」と位置づけている。
独立した音楽として、聴いて美しいものでなければならない。 久石譲(インタビューより)
一日のルーティン
久石譲は 規則正しい生活と継続的な仕事量 で知られる。70代になっても精力的に作曲・指揮を続けるための、職人的なリズムがある。
音楽スタイル
シンプルな旋律、明確な調性、繰り返しと変奏による構造。映画音楽として「画面に寄り添う」機能を持ちつつ、独立したピアノ作品としても完結している。クラシックの厳格な構造と、ポップスの親しみやすさの中間 を歩む。
ミニマル・ミュージックの影響で、シンプルなパターンの繰り返しから感情の波を作る。ペダルとアルペジオによる「響きの広がり」を重視し、ドビュッシー・サティ的な印象派の影響も濃い。
全作品リスト(主要・抜粋)
ジブリ映画音楽
- 1984風の谷のナウシカ
- 1986天空の城ラピュタ(君をのせて)
- 1988となりのトトロ(風の通り道、さんぽ)
- 1989魔女の宅急便(海の見える街)
- 1992紅の豚
- 1997もののけ姫(アシタカせっ記)
- 2001千と千尋の神隠し(あの夏へ・いつも何度でも)
- 2004ハウルの動く城(人生のメリーゴーランド)
- 2008崖の上のポニョ
- 2013風立ちぬ
- 2023君たちはどう生きるか
北野武・他映画音楽
- 1991あの夏、いちばん静かな海。
- 1993ソナチネ
- 1997HANA-BI
- 1999菊次郎の夏(Summer)
- 2002Dolls
- 2008おくりびと(後援編曲)
- 2008かいじゅうたちのいるところ
ピアノ独奏・編曲
- 1997Joe Hisaishi Piano Stories(アルバム)
- 2009Another Piano Stories
- 2015Vermeer & Escher
- 2020Songs of Hope
クラシック・コンサート作品
- 2001WORKS I(指揮者として)
- 2003Encore
- 2005FREEDOM PIANO STORIES 4
- 2017Single Track Music 1(自作交響曲)
- 2020Symphonic Suite "Princess Mononoke"
- 2023The End of the World(管弦楽)
代表作品(ピアノで弾ける)
ピアノ史への貢献
久石譲は 「日本人作曲家による世界的なピアノ作品」を確立した 第一人者。彼の作品は、日本国内にとどまらず、台湾、韓国、中国、欧米のピアノ学習者にも広く弾かれている。
また、「ピアノ学習者が弾きたい曲」のレパートリーを根本から変えた。教則本のクラシックだけでなく、ジブリ音楽・映画音楽が「ピアノを始める動機」になる時代を作った。ストリートピアノ文化と相性がよく、彼の音楽はピアノ学習の入口を広げ続けている。
クラシック界からも高く評価され、世界の主要オーケストラの客演指揮を務めるようになっている。「映画音楽家」「現代作曲家」「指揮者」の三つの顔を持つ稀有な存在。
聖地巡礼
久石譲は現在も活動中の作曲家のため、生家・墓のような聖地は基本的に存在しない。代わりに、彼の音楽が流れる場所、彼の母校、コンサート会場 を訪れることになる。
影響関係
影響を受けた
- ドビュッシー(印象派和声)
- サティ(シンプルな美)
- スティーブ・ライヒ(ミニマル)
- フィリップ・グラス(ミニマル)
- 武満徹(日本の現代音楽)
影響を与えた
- 世界中のピアノ学習者
- 映画音楽作曲家全般
- YouTubeピアニスト
- 新しいクラシック愛好者層
- ストリートピアノ文化
学習者にとって
「Summer」「あの夏へ」はストリートピアノで最もよく聴く曲の一つ。中級者でも届くが、表現のニュアンスは無限に深められる。日本人ピアノ学習者にとって 「弾きたい曲」のトップ層 を占める。
シンプルに見える楽譜でも、「歌わせる」「呼吸する」 演奏ができるかどうかで全く違う音楽になる。多くのピアニストが久石作品を録音しており、聴き比べが学びになる。