強弱・速度
「極めて弱く」。p を 3 つ重ねた最弱の指示。耳を澄まして初めて届く音。
「とても弱く」。室内楽的な親密さ・夜の情景・内面的告白に使われる。
「弱く」。楽器名「ピアノ」も本来「ピアノ・フォルテ(弱く強く弾ける楽器)」の略。
「やや弱く」。p と mf の中間。語りかけの中立的な強さ。
「やや強く」。mp と f の中間。普段の話し言葉より少し張った声。
「強く」。古典派以降の標準的な「強い」音量。f が増えると(ff・fff)より強くなる。
「とても強く」。クライマックス・怒り・歓喜の瞬間に。
「極めて強く」。リスト・ラフマニノフ等の大作で稀に使用。
「だんだん強く」。記号は cresc. または開いていくヘアピン (<)。
「だんだん弱く」。記号は dim. または閉じていくヘアピン (>)。ディミヌエンドも同義。
「その音だけ突然強く」。アクセントよりも強い瞬間的な強調。
「その音を際立たせる」。スフォルツァンドより穏やかな強調。
「だんだん速く」。テンポを徐々に上げる。
「だんだん遅く」。曲の終止や転換点に多用。
「元のテンポに戻して」。ルバートや rit. の後の指示。
「自由なテンポで」(イタリア語で『盗まれた』)。表情のためにテンポを意図的に揺らす。ショパンの十八番。
音符の上の半円と点。「適度に延長して」。実際の長さは演奏者の判断。
音符の上の短い横線。「音価を保持して、しっかり長さを出して」。
音符の上の点。「短く切って」。音価の半分以下で音を切る。
Ped. でペダルを踏み、✻ で離す。スラーの上のラインも踏み替えの指示。
音符・休符・記譜
高音部譜表に置かれる記号。第 2 線(下から 2 番目)が「ト(G)」を示す。
低音部譜表に置かれる記号。第 4 線が「ヘ(F)」を示す。
音を半音高くする臨時記号。調号にも使われる。
音を半音低くする臨時記号。
シャープ・フラットの効果を打ち消し、もとの音に戻す。
音を全音(半音 2 つぶん)上げる。
音を全音(半音 2 つぶん)下げる。
1 小節(4/4 拍子)すべてを満たす最も長い音価の一つ。
全音符の半分。2 拍ぶんの長さ。
標準的な拍を表す音価。1 拍ぶん。
四分音符の半分。連続するときは旗が連結される。
四分音符の 1/4 の長さ。連続するときは二重の旗で連結。
音を出さない指示。各音価に対応する休符が存在する。
同じ高さの 2 音を繋ぎ、合計の長さで保持する。
異なる高さの音群をまとめて滑らかに(レガートに)演奏する指示。
区間を繰り返す指示。括った範囲を 2 回演奏する。
「尾」の意。終結部を独立して示す記号。D.C. al Coda 等で使用。
曲の冒頭に戻って演奏する指示。三部形式の中間で使われる。
セーニョ記号(𝄋)まで戻って演奏する指示。
1 小節の中の拍数(上)と 1 拍の単位(下)を示す。
演奏技術
「滑らかに繋げて」。一つひとつの音を切らず、息を継がずに演奏する技法。
スタッカートよりも極端に短く。音価のごく一部だけを鳴らす。
「歌うように」。メロディを声楽のように歌わせる演奏法。ショパン・モーツァルトの真髄。
和音を一度に弾かず、下から上へ(または逆)順番に弾く技法。「ハープのように」の意。
鍵盤を爪や指の腹で滑らせて、連続した音を出す技法。爆発的な効果を生む。
2 つの音または同じ音を高速で反復し、震えるような効果を作る。
主音と隣接音を高速で交互に弾く装飾音。バロック・古典派で多用。
主音 → 隣接音 → 主音 を素早く繰り返す装飾音。
主音の上下を順に通過する装飾音(上隣→主→下隣→主など)。
本来の音の前に置かれる短い装飾音。長前打音と短前打音がある。
本来の音に華やかさや意味を加える小さな音群。トリル、ターン、モルデント、前打音などの総称。
独立した複数のメロディを同時に進行させ、調和させる作曲技法。バッハの真髄。
「多声」。複数の独立した声部が同時に存在する音楽。対位法とほぼ同義に使われる。
「同声」。1 つのメロディに伴奏が付く音楽。古典派以降の主流。
左手の伴奏パターン「下→上→中→上」の繰り返し。モーツァルト K.545 が代表例。
ハ長調・イ短調などの調性で並んだ音の連なり。指の独立性を養う基礎練習。
楽器構造
鍵盤を押すと弦を叩く木+フェルトの部品。フェルトの硬さで音色が大きく変わる。
鍵盤を押してからハンマーが弦を打つまでの一連のメカニズム。ピアノの命。
弦の振動を止めるためのフェルト部品。鍵盤を離すとダンパーが弦に触れて音が止まる。
踏むとダンパーが全弦から離れ、音が伸びる。ピアノで最もよく使うペダル。
踏むと音色が柔らかくなる。グランドではハンマー位置がずれ、アップライトではハンマーが弦に近づく。
踏んだ瞬間に押されている鍵盤の音だけを保持する特殊ペダル。グランドピアノに付属。
弦の振動を増幅する木の板。スプルースが多用される。ピアノの音色の決定要因。
弦の張力(合計 20 トン以上)を支える金属骨格。1820 年代の発明で現代ピアノを可能にした。
現代ピアノは 88 鍵(白鍵 52・黒鍵 36)。19 世紀後半に標準化。それ以前は 60〜85 鍵が一般的。
弦が水平に張られた本格ピアノ。コンサート用 (D-274 等)、セミコン (C7 等)、家庭用 (C3 等) などサイズ別。
弦が垂直に張られた省スペース型。家庭用の標準。グランドより響きは小さいが整音された音色を持つ。
サンプリング音源とハンマーアクション風の鍵盤を組み合わせた現代の楽器。住宅事情に合った選択肢。
音楽形式
独奏楽器のための器楽曲。通常 3〜4 楽章で構成。古典派・ロマン派の主要形式。
「提示部 → 展開部 → 再現部」の 3 部構造。ソナタの第 1 楽章で典型的に使われる。
独奏楽器とオーケストラの対話による形式。ピアノ協奏曲はモーツァルト以来の伝統。
夜の情景を描く小品。ジョン・フィールドが創始、ショパンが頂点に高めた。
本来は技術練習用。ショパン・リストはエチュードを芸術作品の地位に高めた。
本来はフーガなどに先立つ短い導入曲。後に独立した小品形式に。バッハ・ショパン・ドビュッシーの傑作。
「即興的な」雰囲気を持つ小品。シューベルト・ショパンが多くを残した。
物語性を持つ大規模ピアノ作品。ショパンが 4 曲を残し、形式を確立した。
「冗談」の意。3 拍子の活発な楽章。ベートーヴェン以降、メヌエットに代わって使われた。
ポーランドの 3 拍子の民族舞踊。ショパンが芸術音楽に高めた。58 曲を残した。
ポーランドの厳粛な 3 拍子舞踊。ショパンの「英雄」「軍隊」が有名。
主題を様々に変化させて連ねる形式。バッハ「ゴルトベルク」、ベートーヴェン「ディアベリ」が頂点。
主題が複数の声部で順番に登場し、対位法的に絡み合う形式。バッハの「平均律」が究極形。
同じメロディを時間差で複数の声部が奏でる技法。「パッヘルベルのカノン」が有名。
形式に縛られず、自由に展開する作品。シューマン・ショパンの傑作多数。
民族的素材を自由に組み合わせた幻想的作品。リストの「ハンガリー狂詩曲」が代表。
関連する複数の楽曲をまとめた作品。バッハの「フランス組曲」「イギリス組曲」が定番。
楽譜なしでその場で音楽を生み出す。バロック時代は演奏家の必須技能だった。
時代・流派
1600〜1750 年。対位法・装飾的書法が特徴の時代。バッハ・ヘンデル・ヴィヴァルディが代表。
1750〜1820 年。明快な形式・対称性を重視した時代。ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンが代表。
1820〜1900 年。個人の感情・自由な表現を重視した時代。ショパン・シューマン・リスト・ブラームスが代表。
和音を「色彩」として使う、19 世紀末〜20 世紀初頭の音楽潮流。ドビュッシー・ラヴェルが代表。
シンプルなパターンの繰り返しと変化で構成する 20 世紀の様式。ライヒ・グラス・久石譲が代表。
20 世紀以降の前衛・実験的音楽の総称。無調・偶然性音楽・電子音楽など多様。
ピアノ史用語
1700 年頃にクリストフォリが発明した初期ピアノ。現代ピアノとは音色も構造も大きく違う。
ピアノ以前の鍵盤楽器。弦を爪で弾くため強弱が出せない。バッハの主力楽器。
家庭用の小型鍵盤楽器。微細な強弱が可能だが音量は極小。バッハが家で愛用。
1 オクターブを 12 等分する音律。すべての調で演奏可能。バッハの「平均律クラヴィーア曲集」で広まった。
整数比で構成される自然な音律。特定の調では美しいが転調が困難。ピアノでは実用化されず。
基準音なしで音の高さを当てる能力。6 歳前後までの訓練で身につくとされる。
基準音から相対的に他の音を判断する能力。大人からでも訓練可能。音楽家には十分な能力。
楽譜を見ずに演奏すること。リストが演奏会で初めて行ったとされる。今ではコンサートの標準。
初めて見る楽譜をその場で演奏する能力。プロの伴奏者・指揮者に必須。
協奏曲などで、独奏者が技巧を披露する自由な部分。古典派時代は即興だったが、後に作曲されるように。