Composers

作曲家

Composer Profile

モーリッツ・モシュコフスキー
1854 – 1925 ポーランド/ドイツ ロマン派

モーリッツ・モシュコフスキー

ヨーロッパで最も愛されたサロン・ピアニスト。輝かしい演奏会用練習曲の王。

生涯

1854 年、当時プロイセン領のブレスラウ(現ヴロツワフ)でユダヤ系ポーランド人として生まれた。9 歳でドレスデンに移り、本格的な音楽教育を受ける。

20 代から作曲家・演奏家としてベルリンで活躍。「20 世紀初頭のヨーロッパで最も人気のあるピアノ作品」と呼ばれるほど絶大な人気を博した。

パリで富裕な作曲家として暮らしていたが、第一次大戦でロシア・東欧の楽譜出版で得た資産を失う。晩年は貧困のうちにパリで死去(1925 年、70 歳)。

人となり

モシュコフスキーの人となりを示す 4 つの側面。

人気
サロンの王
19 世紀末〜20 世紀初頭、彼の作品はピアノ音楽の出版部数で常にトップクラスだった。
教育
名教師
弟子にヨーゼフ・ホフマン、ヴァンダ・ランドフスカ、ガンツなどがいる。20 世紀ピアニスト育成に貢献。
技巧
無理のない超絶
リスト・アルカン的な暴力ではなく、輝きと優雅さを両立した「弾いて気持ちのいい」超絶技巧。
運命
富から貧困へ
全盛期は富豪だったが第一次大戦で全資産を失い、最晩年は貧困と病に苦しんだ。

一日のルーティン

全盛期のモシュコフスキーは ベルリン・パリの社交界の中心人物。1 日のスケジュールは多忙だがエレガント。

9:00–10:00 起床、朝食。新聞を読む。
10:00–13:00 作曲。サロン向けピアノ小品、または出版社から依頼された連弾曲。
13:00–15:00 昼食、貴族や音楽関係者との会食。
15:00–18:00 弟子へのレッスン。多くがアメリカ・東欧からの上級ピアニスト。
18:00–20:00 休憩、夕食。
20:00–23:00 サロンでの演奏、または社交クラブでの談笑。

音楽スタイル

モシュコフスキーの様式は 「華やかさと気品の両立」。シューマン・ショパン的なロマン派伝統に、リスト的な輝きを加え、しかし決して下品にならない節度を保つ。

サロン音楽の最高峰 として「楽しい・弾きやすい・しかし高品質」の三拍子を実現した稀有な作曲家。中級者でも輝かしい音色を出せる書法を発明した。

4 手連弾の傑作「スペイン舞曲集 Op.12」は今もピアノ連弾の永遠の定番。輝かしいリズム、独奏では出せないハーモニーの厚み、家庭音楽の喜び。20 世紀の家庭楽譜の最高売り上げ作品の一つ。

全作品リスト(主要)

演奏会用練習曲

  • Op.72 15 の演奏会用練習曲
  • Op.91 6 つの超絶技巧練習曲
  • Op.92 「20 の小練習曲」

連弾

  • Op.12 スペイン舞曲集(5 曲)
  • Op.37 新スペイン舞曲集
  • Op.55 ハンガリー舞曲集

独奏

  • Op.36-6 火花
  • Op.18 セレナータ
  • Op.45-1 ギター

協奏曲

  • Op.59 ピアノ協奏曲 ホ長調
  • Op.18 セレナータ

代表作品(ピアノで弾ける)

ピアノ史への貢献

「弾いて楽しい超絶技巧」の発明。リストが超絶技巧を「神話的な見世物」にしたとすれば、モシュコフスキーは 「中級者にも手の届く輝かしさ」 を発明した。彼の Op.72-6 は世界中のコンクールで「課題曲」として弾かれ続けている。家庭音楽(連弾)の品質も革新。

聖地巡礼

モシュコフスキーゆかりの地は ベルリン・パリ。生地ヴロツワフ(旧ブレスラウ)にも記念施設がある。

生地
モシュコフスキー生家跡(ヴロツワフ)
Wrocław, Poland
生家の正確な場所は不明だが、ヴロツワフ大学の音楽図書館に資料がある。
ヴロツワフ中央駅から徒歩 15 分。
墓所
モンパルナス墓地(パリ)
3 Bd Edgar Quinet, 75014 Paris
パリで貧困のうちに没した彼の眠る場所。サルトル、ボードレールも同じ墓地。
メトロ Edgar Quinet 駅すぐ。

逸話

モシュコフスキーの逸話は「裕福な時代の華やかさ」と「晩年の悲劇」の対比に集中する。

パリ救援コンサート
1924 年、晩年の貧困を救うため、パドレフスキ・ホフマン・ガンツら一流ピアニストたちがニューヨークでチャリティ・コンサートを開催。10 万ドル(当時)を集めた。
「弾いて楽しい」哲学
「ピアノは弾く人を喜ばせなければならない。聴衆だけでなく、演奏する者の指も喜ぶ書法を書く」と語った。
連弾の伝統
「スペイン舞曲集」は出版直後から世界中で売れ続け、20 世紀のあらゆる家庭ピアノ書庫の定番となった。
教育
ホフマンは「モシュコフスキー先生はレッスン中に席を立って、自分でピアノを弾いて見せた。それで全部わかった」と回想している。

影響関係

学習者にとって

中級者の登竜門 Op.72-6 ヘ長調エチュード。輝かしい連続オクターブと装飾的な右手で、ピアノ音楽の華やかさを最も気持ちよく実感できる名曲。連弾の 「スペイン舞曲集」 は家族や友人と楽しむのに最適。