Composers

作曲家

Composer Profile

1855 – 1914 ロシア ロマン派後期

アナトリー・リャドフ

ロシア五人組の系譜を継ぐ、ピアノ小品の魔術師。

生涯

1855 年、サンクトペテルブルクの音楽一家に生まれた。父コンスタンチンは指揮者。サンクトペテルブルク音楽院でリムスキー=コルサコフに師事。

同じ音楽院で 30 年以上教授を務め、プロコフィエフ、ミャスコフスキー、アサフィエフらを教えた。慢性的な怠惰で大規模作品を仕上げられず、ロシア五人組の遺産を主に 短いピアノ小品 として残した。

バレエ・リュスのディアギレフから「火の鳥」のバレエ音楽を委嘱されたが完成できず、若いストラヴィンスキーに巡ってきた。これがロシア音楽史を変えた瞬間。1914 年、心臓発作で 58 歳で世を去った。

人となり

リャドフの人となりを示す 4 つの側面。

小品
小宇宙の魔術師
ピアノ小品の名手。「音楽の玉手箱 Op.32」「魔法の湖 Op.62」など、短い宝石のような作品多数。
怠惰
完成しない大作
慢性的な怠惰で大規模作品を完成できず、「ロシア五人組の縮小版」と揶揄されることも。
教師
次世代の育成
プロコフィエフ、ミャスコフスキーらを教えた。サンクトペテルブルク音楽院の中核教師。
火の鳥事件
ストラヴィンスキーの転機
1909 年「火の鳥」をディアギレフから委嘱されたが期限内に完成できず、ストラヴィンスキーに巡った。これが彼のキャリアを変えた。

一日のルーティン

リャドフは 「怠惰で有名」 だった。一日の大半を読書・チェス・お喋りに費やしたという。

10:00–12:00 起床、ゆっくり朝食。新聞を読む。
12:00–14:00 音楽院での授業(午前は無理だった)。
14:00–17:00 帰宅、昼食、午後のチェス・読書。
17:00–19:00 気が向いた時だけ作曲。短いピアノ小品を 1〜2 曲書く。
19:00–22:00 夕食、サロンでの社交。
22:00–翌朝 読書、または夜更かしの作曲。

音楽スタイル

リャドフの様式は 「ロシア五人組の縮小版」。ムソルグスキー的な民族主義、リムスキー=コルサコフ的なオーケストレーション感、しかしすべてが「小さなピアノ小品」に凝縮されている。

「音楽の玉手箱」 は彼の代名詞。オルゴール風の繊細なピアノ小品。一度聞いたら忘れられない短い宝石。

「魔法の湖」「キキモラ」「バーバ・ヤガ」など、ロシア民話を描いた小規模管弦楽曲も傑作。これらのピアノ独奏版も愛奏される。

全作品リスト(主要)

ピアノ独奏

  • Op.4「組曲」
  • Op.10「アラベスク」
  • Op.32 「音楽の玉手箱」
  • Op.40「3 つの前奏曲」
  • Op.57「2 つのバガテル」

管弦楽(短編)

  • Op.56 「8 つのロシア民謡」
  • Op.62 「魔法の湖」
  • Op.63 「キキモラ」
  • Op.64 「バーバ・ヤガ」

合唱・声楽

  • Op.17 「20 のロシア民謡集」
  • 若年期の合唱小品多数

代表作品(ピアノで弾ける)

ピアノ史への貢献

「短編ピアノ小品の魔術師」。ショパンの前奏曲、シューマンの「子供の情景」の系譜を引き継ぐ「小宇宙としてのピアノ小品」の伝統を守った。「ロシア音楽史の隠れた節目」:1909 年「火の鳥」を完成できなかったことで、ストラヴィンスキーへの道を開き、20 世紀音楽史を変えた。

聖地巡礼

リャドフゆかりの地は サンクトペテルブルク が中心。

教育機関
サンクトペテルブルク音楽院
Театральная площадь, 3, Санкт-Петербург
彼が 30 年教えた音楽院。プロコフィエフ、ミャスコフスキーを育てた教室。
サンクトペテルブルク地下鉄 Sadovaya 駅から徒歩 10 分。
墓所
チフヴィン墓地(サンクトペテルブルク)
Александро-Невская лавра, Санкт-Петербург
ロシア音楽家の聖地。チャイコフスキー、ムソルグスキーと並ぶ。
サンクトペテルブルク地下鉄 Площадь Александра Невского 駅すぐ。

逸話

リャドフの逸話は「怠惰の天才」としての逸話に集中する。

「火の鳥」事件
1909 年ディアギレフから「火の鳥」のバレエ音楽を委嘱された。半年経っても1音も書けず、痺れを切らしたディアギレフは若いストラヴィンスキーに依頼を切り替え。これがストラヴィンスキー伝説の出発点。
リムスキー=コルサコフの嘆き
師リムスキー=コルサコフは「彼の才能はムソルグスキーに匹敵するが、彼は決して書かない」と嘆いた。
チェスの達人
チェスがプロ級で、サンクトペテルブルクのチェス・サロンで知られた存在。「作曲よりチェスを好む」と冷笑された。
小さな宝石
「私は大作を書けない。だから完璧な小品を書く」と語った。Op.32「音楽の玉手箱」は 3 分の小品だが、20 世紀ピアノ小品の傑作として残った。

影響関係

学習者にとって

「音楽の玉手箱」 Op.32 は中級者の永遠の人気曲。3 分の短い曲だが完璧な構造。オルゴール風の繊細さを学べる。プレリュード Op.40-1 も短くて美しい入門曲。上級者は 「魔法の湖」(ピアノ独奏版) でロシア・ロマン派後期の幻想美に触れる。