生涯
1880 年、モスクワのドイツ系一家に生まれた。モスクワ音楽院でピアノを学び、最高位の金メダルを獲得。同時代のスクリャービン、ラフマニノフと並ぶピアノの巨匠と評価された。
20 代から作曲家・演奏家として頭角を現す。14 のピアノソナタは「ベートーヴェン以降最大のソナタ群」と評され、3 つのピアノ協奏曲も傑作。
ロシア革命後、1921 年に亡命。ドイツ・フランスを経てロンドンに定住。ラフマニノフの友人として支援を受けた。1951 年、ロンドンで 71 歳で世を去った。
人となり
メトネルの人となりを示す 4 つの側面。
一日のルーティン
メトネルの一日は 厳格な作曲スケジュール に支配されていた。亡命後も毎日同じリズムを守った。
音楽スタイル
メトネルの様式は 「ロシア・ロマン派の頂点」。ベートーヴェン的な構造性、ブラームス的な濃密さ、ロシア的な内省を独自に融合。
14 曲のピアノソナタ は彼の中核。ベートーヴェンのソナタ群以降、最も体系的で野心的なソナタ集と評される。「忘れられし調べ」「ソナタ・ロマンティカ」「ソナタ・トラジカ」など、副題付きの傑作多数。
「おとぎ話(Skazki)」 は彼独自のジャンル。短編のピアノ小品で、それぞれに物語的な要素を持つ。シューマンの「クライスレリアーナ」を思わせる詩情。生涯で 38 曲を書いた。
全作品リスト(主要)
ピアノソナタ(14 曲)
- Op.5 ヘ短調
- Op.11 ソナタ三部作(変イ・ヘ・嬰ハ短調)
- Op.22 ト短調
- Op.25 「夜の風」「ソナタ・トラジカ」
- Op.27 「ソナタ・バラード」
- Op.30 「戦争のソナタ」
- Op.38 「忘れられた調べのソナタ・ロマンティカ」
- Op.53 「ロマンティック・ソナタ」「ミネオラ・ソナタ」
- Op.56 「ソナタ・イディリア」
協奏曲
- Op.33 ピアノ協奏曲第1番 ハ短調
- Op.50 ピアノ協奏曲第2番 ハ短調
- Op.60 ピアノ協奏曲第3番 ホ短調「バラード」
おとぎ話・小品集
- Op.8, 9, 14, 20, 26, 34, 35, 42, 48, 51 各種のおとぎ話
- Op.38, 39, 40 「忘れられし調べ」
- Op.31 「3 つのアラベスク」
代表作品(ピアノで弾ける)
ピアノ史への貢献
「20 世紀のロシア・ロマン派の最後の砦」。スクリャービンが神秘主義へ、ラフマニノフが叙情主義へ、ストラヴィンスキーが原始主義へ向かう中、メトネルは 「ベートーヴェン的な厳格な構造性」 を貫いた。彼の 14 ソナタは、ベートーヴェンの 32 ソナタに次ぐ「ピアノソナタ史上最大の体系的成果」。
聖地巡礼
メトネルゆかりの地は モスクワ(生地)・ロンドン(終焉の地)。
逸話
メトネルとラフマニノフの友情は、20 世紀音楽史で最も深い友情の一つとされる。
影響関係
学習者にとって
Op.20-1「ソナタの形のおとぎ話」 から始めるのがおすすめ。中級者でも弾ける詩情あふれる短編。次に 「忘れられし調べ Op.38-1」 で叙情的メロディを学ぶ。上級者は 「ソナタ・トラジカ Op.39-5」 で彼の真髄に触れる。彼の作品を弾くことは「忘れられた巨匠を蘇らせる」喜び。