Composers

作曲家

Composer Profile

1937 – 2020 ロシア 現代

ニコライ・カプースチン

ジャズとクラシックを完全融合させた現代の鬼才。「ロシアのガーシュウィン」。

生涯

1937 年、ソ連・ウクライナのゴルロフカに生まれた。モスクワ音楽院でアレクサンドル・ゴリデンヴェイゼル(ラフマニノフの弟子)に師事し、本格的なクラシック・ピアノを学ぶ。

20 代でジャズに目覚め、オレグ・ルンドストレム楽団のピアニストとして 11 年間活動。クラシックの厳密な構造と、ジャズの即興・スウィングを完全に融合させた独自のスタイルを確立。

ピアノソナタ 20 曲、ピアノ協奏曲 6 曲、無数の練習曲・小品。21 世紀に入って急速に世界中で人気が高まった。2020 年、モスクワで 82 歳で世を去った。

人となり

カプースチンの人となりを示す 4 つの側面。

融合
ジャズ × クラシック
ラグタイム、ブギウギ、ビバップ、ハードバップ、フュージョンを、本格的なクラシック構造で完全融合。
ピアニスト
自作の達人
自作を自ら録音し、独自の演奏スタイルを残した。ピアノ・テクニックは超絶。
遅咲き
21 世紀の発見
ソ連時代にはマイナーな存在だったが、2000 年代以降世界中で愛奏される。中国・日本・欧米で爆発的人気。
多作
161 番までの作品
Op.161 までの膨大な作品。ピアノソナタ・協奏曲・練習曲・前奏曲・連弾曲など。

一日のルーティン

カプースチンの一日は 「作曲とジャズ・ピアノの練習」。生涯シンプルな生活を送った。

8:00–9:00 起床、朝食。
9:00–13:00 作曲。新しいピアノ作品を毎日書く。
13:00–14:00 昼食、休憩。
14:00–18:00 ピアノ練習。自作の演奏準備、または新しいジャズの研究。
18:00–20:00 夕食、家族との時間。
20:00–22:00 読書、または夜の作曲。

音楽スタイル

カプースチンの様式は 「完全に書き出されたジャズ」。即興のように聞こえるが、すべて楽譜に正確に書かれている。クラシックの厳密な構造とジャズの自由な響きの融合。

「即興のような楽譜」:ジャズ・ピアニストが即興で弾いているように聞こえる音楽を、完全に楽譜で書き出した。これにより、世界中のクラシック・ピアニストが「ジャズらしさ」を弾けるようになった。

ピアノ書法の革新:オスカー・ピーターソン、アート・テイタムらジャズ・ピアニストの技法を、クラシック・ピアノ書法に翻訳。両手の独立、複雑な内声、ブルー・ノートの巧みな使用。

全作品リスト(主要)

ピアノソナタ(20 曲)

  • Op.39 ソナタ第1番
  • Op.59 ソナタ第2番
  • Op.85 ソナタ第8番
  • Op.106 ソナタ第10番
  • Op.115 ソナタ第13番

ピアノ協奏曲(6 曲)

  • Op.2 ピアノ協奏曲第1番
  • Op.14 ピアノ協奏曲第2番
  • Op.50 ピアノ協奏曲第3番
  • Op.56 ピアノ協奏曲第4番
  • Op.72 ピアノ協奏曲第5番

独奏曲集

  • Op.40 8 つの演奏会用練習曲
  • Op.41 24 の前奏曲
  • Op.53 24 の前奏曲とフーガ
  • Op.117 「ボッサノヴァ」

代表作品(ピアノで弾ける)

ピアノ史への貢献

「ジャズとクラシックの完全融合」 を成し遂げた稀有な作曲家。それまでガーシュウィン、ストラヴィンスキー、ラヴェルがジャズを部分的に取り入れたのに対し、カプースチンは 「クラシック・ピアニストがジャズの完全な音楽体験を弾ける楽譜」 を発明した。21 世紀の若いピアニストが世界中で愛奏する「現代の発見」。

聖地巡礼

カプースチンゆかりの地は モスクワ。生地ゴルロフカは現在のウクライナ内。

教育機関
モスクワ音楽院(モスクワ)
Большая Никитская улица, 13, Москва
彼が学んだ音楽院。資料が図書館に保管。
モスクワ地下鉄 Okhotny Ryad 駅から徒歩 5 分。
墓所
モスクワの墓地(詳細非公開)
Москва
彼の家族が静かに見送った。著名な墓地ではない。
モスクワ郊外。

逸話

カプースチンの逸話は「ジャズと共産党体制の狭間」の物語。

共産党とジャズ
ソ連時代、ジャズは「アメリカの腐敗音楽」として禁止に近い扱い。それでもカプースチンはジャズを書き続け、地下で広まった。
オスカー・ピーターソンの影響
カプースチンはオスカー・ピーターソンを神と崇め、彼の即興を楽譜に書き起こす作業から自身のスタイルを発展させた。
遅咲きの世界的人気
1990 年代までほぼ無名。2000 年代に若いピアニストたちが発見し、2010 年代以降、世界中のリサイタル・コンクールで定番に。
「すべて楽譜に書く」
「即興は私の流儀じゃない。私はすべてを正確に楽譜に書く。だからどのピアニストも私の音楽を弾ける」と語った。

影響関係

学習者にとって

Op.40 No.1「前奏曲」 は中上級者の登竜門。短いがジャズとクラシックの完璧な融合を体感できる。Op.40 No.3「トッカティーナ」No.5「冗談」 も人気。Op.41-1, 41-2 は中級者向けの前奏曲。クラシック・ピアニストが「ジャズらしさ」を最も気持ちよく学べる作品群。